龍井茶(Lóngjǐng chá、龙井茶)は、浙江省産の扁平な釜炒り緑茶であり、国家標準 GB/T 18650-2008 により地理的表示として保護されている名称である。産地は西湖、銭塘、越州の三つの産区に分かれ、四つの地級市にまたがる18の県・市・区を範囲とする。本稿ではこの名称全体を扱う。唯一「西湖龍井」を名乗ることのできる西湖産区の茶については別途解説する。
1. 分類と原産地
- 種類: 緑茶(绿茶、lǜchá)。標準は龍井を、許可された品種の葉からなり、保護地域内で伝統的技術により摘採・加工された扁平な緑茶(扁形绿茶、biǎnxíng lǜchá)と定義し、「色緑、香郁、味醇、形美」すなわち緑の色沢、豊かな香気、まろやかな味わい、美しい形状をその特質とする。
- カテゴリー: 扁平な釜炒り緑茶。地理的表示製品。
- 原産地: 中国、浙江省(浙江、Zhèjiāng)。標準の一覧によれば、杭州市と紹興市の全域、ならびに磐安県と東陽県(金華市)および天台県(台州市)の一部の郷・鎮。
- 保護地域: GB/T 18650-2008 による。
- 西湖(西湖产区、Xīhú chǎnqū) — 杭州市西湖区。西湖風景名勝区を含む。
- 銭塘(钱塘产区、Qiántáng chǎnqū) — 蕭山、浜江、余杭、富陽、臨安、桐廬、建徳、淳安。
- 越州(越州产区、Yuèzhōu chǎnqū) — 紹興、越城、新昌、嵊州、諸曁の全域、および上虞、磐安、東陽、天台の一部の郷・鎮。標準には「紹興」(県)とあるが、2019年の文献ではその位置に柯橋区が挙げられている。
- 相違点: 中国語版ウィキペディアは12県の全域と他4県の一部を数えており、標準とは一致しない。行政区画の変更によるものと考えられる。
- 地理座標: 杭州は北緯約30.25度、東経約120.15度。
2. 歴史と文化的意義
- 歴史:
- 名称。 名称は西湖区の龍井の地に関連する。中国語版ウィキペディアは古い文献を引用し、龍泓(龙泓)という泉を「今は龍井と呼ぶ」と記す。伝説によれば、乾隆帝が胡公廟の前にある十八本の茶樹を「御茶」と名づけたとされる。
- 2002年。 強制国家標準 GB 18650-2002「原産地保護製品 龍井茶」が公布された。
- 2008年。 7月15日に GB/T 18650-2008「地理的表示製品 龍井茶」が公布され、10月1日に施行された。これは任意標準となり、安全に関する規範は GB 2762 および GB 2763 に委ねられ、機械加工も龍井茶の技術に適合すべきとの要件が加わった。
- 2008年。 百科事典の記述によると、西湖龍井の技法が国家級無形文化遺産リスト(第 VIII-148 号)に登録された。
- 2012年。 省級加工規程 DB33/T 239-2012 が1999年の機械加工規程に取って代わり、手作業による加工が加わった。
- 2022年。 11月29日、ユネスコが「中国の伝統的製茶技術と関連習俗」を一覧表に登録した。西湖龍井の技法もその一部である。
- 2024年。 中国国家知識産権局(CNIPA)の2024年9月27日付公告第597号により、さらに4社の龍井茶企業に地理的表示専用標章の使用が認められた。
- 2025年。 国家標準プラットフォーム上で、2025年8月4日付で GB/T 18650-2008 の見直しが「現行維持」との結論とともに記録された。
- 名称: 龙は「龍」、井は「井戸」を意味し、「龍の井戸の茶」となる。
- 文化的意義: 「龍井」は三つの産区すべてを指し、「西湖龍井」は西湖産区のみを指す。それぞれに固有の標準がある。
3. 植物学的記述と原料
- 品種: 標準は、龍井群体種(龙井群体)、龍井43号、龍井長葉、迎霜(迎霜)、鳩坑種(鸠坑种)、および龍井茶に適したその他の認定品種を認める。標準作成者の解説によれば、嘉茗一号(嘉茗一号)、通称烏牛早(乌牛早)もこれに含まれる。
- 群体種と龍井43号: 杭州市当局の資料によれば、群体種(群体种、qúntǐ zhǒng)は地元の種子繁殖による在来集団であり、龍井43号は中国農業科学院茶葉研究所が同じ集団から育成した早生のクローン品種である。どちらかが優れているということはない。
- 摘採: 樹冠1平方メートルあたりに適格な芽が10~15個現れた時点で開始する。春季は毎日または隔日、手摘みで、芽を一つずつ摘む(提手采)。
- 原料標準: 生葉は五段階に分けられる。最高級は、わずかに開いた一葉を伴う芽で、芽が葉より長く、長さ2.5 cm以下。第四級は、長さ4.5 cmまでの二葉から三葉を伴う芽。第四級未満の葉は龍井茶には用いない。
4. テロワールと栽培の特徴
- 地域: 標準によれば、銭塘江および曹娥江流域の山地・丘陵地で、温暖かつ多雨、空気は湿潤である。
- 土壌: 主に紅黄壤とその派生土壌で、pH 4.3~6.5。
- 栽培高度: 標準に高度の規定はなく、参照資料にもデータはない。
- 栽培管理: 標準によれば、生育期には深さ10~15 cm、秋には20~30 cmの耕耘を行う。窒素、リン、カリウムは通常 3:1:1 の比率とする。
- 生産量: 杭州の報道によれば、2018年の龍井茶生産量は2万2千トン。最も多いのは越州産区、次いで銭塘産区であり、西湖産区は全体のわずか数パーセント、一つの推計では約3.5 %に過ぎない。
5. 製造技術
標準は基本工程を次のように定める。攤放(摊放、tānfàng)— 青鍋(青锅、qīngguō)— 攤涼回潮(摊凉回潮、tānliáng huícháo)— 輝鍋(辉锅、huīguō)。手作業による釜炒りは十の手技、抓、抖、搭、榻、捺、推、扣、甩、磨、圧から成る。
省級規程 DB33/T 239-2012 は数値を示す。
- 攤放: 6~12時間。第二級以上の生葉は厚さ30 mm以下に広げ、含水率が(70 ± 2)%になるまで置く。
- 手作業による青鍋: 釜温150~200 °C。最高級は150~170 °Cで一釜あたり100~150 g、下級はより多く投入する。12~14分で含水率約40 %まで炒る。
- 攤涼: 30~60分。芽、茎、葉の水分を均一に戻す。
- 手作業による輝鍋: 上級品は一釜あたり200~250 g、15~20分で含水率6.5 %以下まで炒る。仕上げに毛を落とし、できあがった葉は指で折れる程度になる。
- 機械工程: 青鍋は機械で220~260 °C、4~6分。成形と乾燥はドラム式で行う。
- 石灰処理(收灰、shōuhuī): 生石灰のそばに10~15日置く。茶と石灰の比率は5:1とし、紙または白布を隔てる。
6. 官能的特徴
標準は茶を最高級および一級から五級までの六段階に分ける。最高級について。
- 乾燥茶葉の外観: 扁平で滑らか、光沢があり、まっすぐで先端が鋭く、若々しい緑色で新鮮、均整がとれ、緊結し、夾雑物がない(扁平光润、挺直尖削;嫩绿鲜润)。
- 乾燥茶葉の香気: 標準は別途これを記述しない。
- 水色の香気: 清らかで新鮮、持続性がある(清香持久)。五級では穏やか(平和)。
- 味わい: 新鮮でまろやか、甘く爽快(鲜醇甘爽)。
- 水色: 若々しい緑色で明るく透明(嫩绿明亮、清澈)。五級では黄緑色。
- 茶殻(浸出葉): 細く若い芽と葉が「花」のように開き、均整がとれ、若々しい緑色で明るい(芽叶细嫩成朵)。
民間の「四絶」は「味甘」と言うが、標準は「味醇」とする。
7. 化学成分
標準は物理化学的指標を定める。
| 指標 | 最高級、一級、二級 | 三級、四級、五級 |
|---|---|---|
| 含水率、以下 | 6.5 % | 7.0 % |
| 総灰分、以下 | 6.5 % | 7.0 % |
全等級で水溶性抽出物は36.0 %以上、粉・砕片は1.0 %以下。アミノ酸やポリフェノールに関する規定は標準にない。
8. 淹れ方
緑茶の標準的な方法に従う。
- 湯温: 80~85 °C。
- 茶量: 150 ml あたり3 g。
- 茶器: ガラスコップまたは白磁の蓋碗。
- 手順:
- 茶器を温める。
- 茶葉を入れ、器の縁に沿って湯を注ぐ。
- 一煎目は40~60秒で出す。
- 茶湯を少し残して飲み、湯を継ぎ足す。
- 二、三煎まで繰り返す。
9. 保存
標準によれば、清潔で乾燥した涼しい倉庫で、異臭がなく、石灰を用いるか約5 °Cの冷蔵とし、日光と湿気を避ける。家庭では密封容器に入れて冷蔵庫で保存し、一年以内に飲み切るのがよい。
10. 価格と偽物
参照資料に価格のデータはない。
- 偽物を避けるには:
- 龍井と名乗れるのは三つの産区の茶のみである。標準作成者の一人(2019年)によれば、他地域で似せて作られた茶は単なる「扁平茶」(扁形茶)に過ぎない。
- 許諾を受けた企業は地理的表示専用標章を付け、標準に従い産区(西湖、銭塘、越州)を表示する。
- 「西湖龍井」は西湖産区の茶にのみ合法的に使用できる。
11. 興味深い事実
- 2002年の標準は強制的だったが、2008年の標準は任意的である。
- 完成茶を生石灰のそばに置く工程は国家標準が言及し、省級規程が数値を定める。10~15日、茶と石灰の比率は5:1。
- 民間の言葉は「甘い」味を約束するが、標準は「まろやか」とする。
12. 他の茶との比較
- 西湖龍井(西湖龙井): 西湖産区の茶。この名称の中で最も限定された範囲であり、固有の標準を持つ。
- 越郷龍井(越乡龙井)と大仏龍井(大佛龙井): 越州産区に属する嵊州と新昌の龍井。
- 千島玉葉(千岛玉叶): 銭塘産区に含まれる淳安県の扁平な緑茶。
- 三峡龍井(三峡龙井): 龍井の技術による湖北省の茶。湖北省は標準の地域に含まれない。
結論:
龍井茶は一つの茶園ではなく、明確な境界を持つ名称である。三つの産区、18の行政区画、そして一つの標準が、品種、五段階の生葉、六段階の完成茶、そして二度の釜炒り技術を定める。扁平で滑らかな葉、新鮮な香り、若々しい緑色の水色が三つの産区すべてに共通する基調であり、その枠内で「西湖龍井」は別個の物語である。
出典
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