万源富硒茶(Wànyuán fùxīchá、ワンユエン・フーシーチャー)は「セレンを豊富に含む万源の茶」を意味する、四川省北東部、達州市の県級市・万源市(万源市)の保護された緑茶の名称である。万源市は四川・陝西・重慶が接する大巴山(ダーバーシャン)山脈の南斜面に位置する。「富硒」という語は等級ではなく土壌を指しており、当局は万源を四川省で唯一の天然セレン含有地域と称している。2025年の保護要件では、扁平でまっすぐな緑茶であり、毫(うぶ毛)を帯び、若芽の豊かな香り、新鮮ですっきりとした甘い余韻、杏色を帯びた緑色の水色(すいしょく)を持つと記載されている。県のデータによれば、この名称における主要製品は巴山雀舌(バーシャン・チュエシャー)である。
1. 分類と起源
- 種類: 緑茶(绿茶、lǜchá)。保護要件は酸化を伴わない製法を定め、扁平という単一の形状のみを記載している。かつての農業部門の規格を再録した資料では、この名称が6つの茶類すべてに適用されるとされていたが、その原文は確認された資料では入手できない。
- 名称: 万源(Wànyuán)は都市名、富硒(fùxī)は「セレンを豊富に含む」、茶(chá)は茶を意味する。
- カテゴリー: 扁平緑茶。地理的表示保護製品(2025年)。以前は農業地理的表示。
- 原産地: 中国、四川省(四川、Sìchuān)、達州市(达州、Dázhōu)、県級市・万源市(万源、Wànyuán)。
- 保護地域: 草垻鎮、白羊郷、固軍郷、青花鎮、井渓郷を含む48の郷鎮。達州ポータルサイトは112村、10,000ヘクタール、年間7,500トンと補足している。
- 地理座標: 東経107°29′–108°31′、北緯31°39′–32°20′。保護要件に定められた地域の範囲。
- 申請者: 万源市茶葉局(万源市茶叶局)。
2. 歴史と文化的意義
- 歴史:
- 巴の地。 参考資料は『華陽国志』(《华阳国志》)を引き、巴の章で園芸植物として茶が挙げられているとする。これは巴全域についての記述であり、万源のみを指すものではない。
- 紫雲坪の碑文。 石窩郷古社坪村(石窝乡古社坪村)には「紫雲坪植茗霊園記」(《紫云坪植茗灵园记》)という岩壁碑文が残る。達州ポータルサイトはこれを中国で発見された最古の茶栽培に関する岩壁碑文としている。地元の文献は北宋・大観3年(1109年)のものとしているが、碑文の全文および金石学的な公刊物は確認された資料にはないため、その内容はここでは再録しない。
- 2001年–2008年。 達州ポータルサイトによれば、2001年に市は「四川省著名セレン茶の里」の称号を獲得し、2006年に茶葉基地が無公害農産物認証を取得、2006年と2007年に巴山雀舌が四川省十大名茶に選ばれ、2007年12月に中国食品工業協会が万源を「中国富硒茶之都」(中国セレン茶の都)に認定した。
- 2009年–2010年。 達州ポータルサイトは2009年に農業部の農業地理的表示認証を取得したとしている。参考資料は農業部の登録決定日を2010年3月8日としている。同一手続きの異なる段階である可能性がある。
- 2025年。 中国国家知識産権局は公告第646号(9月23日署名、10月9日公表)で870の地理的表示保護製品を承認した。万源富硒茶は516番目に記載されている。
- 文化的意義: 紫雲坪の碑文は、県当局によって現地の茶栽培の古さを示す証拠とされている。人民網四川チャンネル(2023年)によれば、三清廟村に万源セレン茶歴史館(万源富硒茶史馆)が設けられている。
3. 植物学的記述と原料
- 品種 / 栽培品種: 保護要件は「現地の条件に適した改良品種」を定め、福鼎大白(Fúdǐng dàbái)、福選九号(Fúxuǎn jiǔ hào)、名選131(Míngxuǎn 131)、平陽特早(Píngyáng tèzǎo)を挙げる。一覧は限定的ではなく、在来品種は含まれていない。
- 摘採: 手摘み。晴れた午前中に行い、葉は竹製の容器に入れ、直ちに工場へ運ぶ。
- 摘採基準: 保護要件には定められていない。
4. テロワールと栽培の特徴
- 地域: 四川盆地の北東端、大巴山の南斜面。北は陝西省、東は重慶市と接する。地元の文献はこの地を中国の南北の気候の境界、嘉陵江と漢水の分水嶺としている。
- 栽培標高: 茶園は主に800–1,200 m。達州および万源のサイトによる。市域の標高は335–2,412 m。保護要件に標高の定めはない。
- 気候: 亜熱帯湿潤モンスーン気候で霧が多く、標高による気候帯の変化がある。年平均気温14.7℃、年間降水量1,169.3 mm、無霜期間は230日超。森林率は達州ポータルサイトが61.3%、万源サイト(2020年)は66.8%としている。
- 土壌: 保護要件ではpH 5.0–6.5、有効土層50 cm超、0–45 cm層の有機物含有量15 g/kg以上、有効カリウム100 mg/kg以上、有効リン20 mg/kg以上と定める。万源サイトは茶園土壌を弱酸性で有機物に富むとし、陸羽が茶に最適とした「爛石地」になぞらえている。
- セレン: 万源サイトによれば、西南農業大学と成都理工大学が1992年、2006年、2007年に土壌と生産物を調査し、万源を四川省で唯一の天然セレン含有地域と認めた。セレンは帯状に分布し、水溶性セレンは3.93–12.35 ng/g。亜鉛と銅も多く含まれる。
- 植栽: 保護要件では二条植え、1ムーあたり約6,000株と定める。
5. 製造技術
保護要件に基づく工程順。数値条件は記載なし。
- 生葉の萎凋(摊青、tānqīng)。
- 殺青(杀青、shāqīng)。
- 揉捻(揉捻、róuniǎn)。
- 焙乾(烘青、hōngqīng)。
- 整形(整形、zhěngxíng)。
- 毫出し(提毫、tíháo)。
- 乾燥(烘干、hōnggān)。
加工前に夾雑物は手作業で除去する。
6. 官能評価特性
保護要件による。
- 乾燥茶葉の外観: 扁平で均整がとれ、まっすぐ(扁平匀直)。緑色で光沢があり、毫を帯びる(绿润带毫)。
- 乾燥茶葉の香り: 確認された資料に個別の記述はない。
- 水色の香り: 若芽の香りが豊か(嫩香馥郁)。万源サイトでは市の茶全体について別の表現を用いており、栗の香りが濃厚(栗香浓郁)としている。
- 味: 新鮮ですっきりとし、甘い余韻(鲜爽回甘)。
- 水色: 杏色を帯びた緑色で明るい(杏绿明亮)。
- 茶殻(浸出後の葉): 黄緑色でやや明るい(黄绿尚亮)。
7. 化学成分
保護要件に基づく物理化学的指標。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 水溶性抽出物 | 38–48 % |
| 茶ポリフェノール | 20–35 % |
| セレン | 0.242–0.67 μg/g |
| 粗繊維 | 16 g以下 |
| 灰分 | 6.0 g以下 |
粗繊維と灰分は、要件本文では基準となる質量の記載なくグラム単位で示されている。セレンは理化学的指標であり、味では判別できない。
8. 効能
この茶に特有の作用について検証されたデータはない。名称中のセレンは土壌の特性と含有基準を示すものであり、効能の保証ではない。
9. 淹れ方
緑茶の一般的な方法に従う。
- 湯温: 80–85 °C。
- 茶葉量: 150 mlあたり3 g。
- 茶器: ガラスコップまたは白磁の蓋碗。
- 手順:
- 茶器を温める。
- 茶葉を入れ、壁面に沿って注湯する。
- 一煎目は40–60秒で抽出する。
- 一部を残して飲む。
- 湯を注ぎ足す。
- 再抽出は2–3回。
10. 保存
一般的な方法に従う。密閉包装で冷蔵庫0–5 °C、光・湿気・においを避ける。1年以内に飲み切るのが望ましい。
11. 価格と偽造品
確認された資料に価格情報はない。
- 偽造品を避けるには:
- 地理的表示専用標章を確認する。使用権は万源市知識産権部門を通じた申請、四川省での審査、国家知識産権局の承認を経て付与される。
- 指定された48郷鎮で製造された茶であることを確認する。
- 包装の「セレン」の表示だけでは証明にならない。セレン含有量は検査報告書でのみ確認できる。
12. 興味深い事実
- 保護要件は害虫駆除用振動式捕虫灯の設置密度まで定めており、茶園50ムーごとに1基としている。
- 公告第646号では、万源の茶は南江大叶茶の直後、515番と516番に並んで記載されている。
13. 他の茶との比較
- 巴山雀舌(バーシャン・チュエシャー): 万源の扁平緑茶。県のデータによればこの名称の主要製品。独自の歴史を持つ別ブランド。
- 南江大叶茶(ナンジャン・ダーイエチャー): 同じ四川北東部の在来品種から作られる緑茶。南江県も「セレン茶の里」の称号を持つ。
- 恩施富硒茶(エンシー・フーシーチャー): 湖北省恩施のセレン茶名称。資料上、茶類は特定されていない。
- 開陽富硒茶(カイヤン・フーシーチャー): 貴州省のセレン含有緑茶。
まとめ:
万源富硒茶は大巴山南斜面の扁平緑茶であり、その名称は1992年から2007年の調査で裏付けられたセレン含有土壌と、県当局が中国最古とする茶栽培の岩壁碑文という二つの根拠に支えられている。杯には杏色を帯びた緑色の水色、若芽の豊かな香り、甘い余韻が現れる。セレンについては検査報告書の確認が必要である。
出典
地理的表示
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